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窃盗罪・既遂時期
~ 占有戦線異状なし ~
次のような河内長野市で起きた事例があるとします。
Aは,自宅のテレビが古くなり映りも悪くなったので買い換えたいと思っていました。最近は4Kのテレビも出てきておりAはテレビに興味をもっていました。
そこで,Aは河内長野市にあるV大型家電量販店にテレビを見に行きました。V店では,テレビは2階の家電売り場においてあります。展示用のテレビがたくさんあり,どれも素晴らしいものばかりです。その中に割とコンパクトなテレビがありました(幅45mm・高さ400mm・奥150mm)。
フィットネスクラブのランニングマシンに備えつけてあるテレビぐらいの大きさです。値段は9万円です。Aは9万円を持っていませんでしたが,どうにかしてこのテレビを家に持って帰り,家で見たいと思いました。
Aは,悩んだ挙句に次のようなことをひらめきました。
「2階の男子用トイレの洋式トイレ内には天井に棚がある。Aは身長が185cmあるので,自分の身長を利用してこの棚にいったんテレビを隠そう。」
Aは,このテレビを盗むために,まずテレビを買い物カートに乗せ,精算せずに同じ階のトイレにテレビを持ち込みました。そして,洋式トイレ内の天井の棚にテレビを隠しました。トイレから出てきて,テレビをいれるための袋を1階の雑貨売り場で購入しました。
その後,Aは2階に戻り,テレビを袋の中に入れて持ち帰ろうとしました。しかし,この一部始終を見ていた警備員が不審に思って,ずっとAの後をつけていました。Aが袋をもってトイレに入ったとき,警備員は即座にトイレに入りました。Aはやばいと思い、用を足すふりをしましたが,警備員が天井の棚をみるとテレビが入っているではありませんか。
警備員はAを別室に連れてゆき,話を聴きました。
そして,防犯カメラ映像をみると,Aがテレビをトイレに持ち込んでいるのが映し出されていたため,警備員は警察を呼びました。そして,Aは窃盗罪で逮捕されることとなります。
(上記事例は裁判例を参考としたフィクションです)
本件で問題となるのは,窃盗罪だということはすぐにわかると思います。
刑法235条には,次のような規定があります。
「他人の財物を窃取した者は,窃盗の罪とし10年以下の拘禁刑(※)又は50万円以下の罰金に処する。」
簡単にいうと,他人の物を他人の意思に反して盗ると窃盗罪が成立するというわけです。ここで,「窃取」とは, 他人の占有する財物を、その占有者の意思に反して自己の占有に移転させる行為をいいます。
(※)拘禁刑とは,2022年6月17日公布の改正刑法により,従来の懲役と禁錮を一本化したものとして創設された2025年6月1日施行の新しい刑の種類です。
もっとも,本件では1点悩ましいところがあります。それは,Aの窃盗は既遂に達しているかということです。
ここで刑法43条・44条を見てみましょう。
【刑法43条本文】犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は,その刑を減刑することができる。
【刑法44条】未遂を罰する場合は,各本条で定める。
つまり,簡単にいうと,犯罪が未遂の場合には,その刑を減刑することができるというわけです。ただし,44条にあるように未遂罪が規定されていなければなりません。
例えば,名誉棄損罪は未遂罪が規定されていないため,名誉棄損の未遂罪はありません。では,窃盗罪はどうでしょうか?
ここで,刑法243条をみてみます。
【刑法243条一部抜粋】刑法235条(窃盗)の罪の未遂は罰するとあります。
窃盗罪には,未遂罪が規定されています。そのため,窃盗に着手したものの,これを遂げなかった場合には,その刑を減刑されることがありえます。
は,本件におけるAはどうなのでしょうか?Aはテレビを洋式トイレの棚に入れただけで,テレビを店の外に持ち出しておらず,まだ窃盗を遂げていないので窃盗未遂罪にすぎず,刑が減刑されるのではないでしょうか?もう少し言うと,窃盗罪はどの時点で既遂(窃盗を遂げた時,つまり「窃取」したとき)となるのでしょうか?
これについては,様々な見解があるところですが,通常,窃盗罪の既遂時期は,「他人の占有を侵害して財物を自己の占有に移したとき」と解します。判例も,不法に領得する意思をもって,事実上他人の支配内に存する物体を自己の支配内に移したときに窃盗罪は既遂になると考えています。
そして,「事実上他人の支配内に存する物体を自己の支配内に移したとき」の具体的基準については,事件ごとに,その財物の性質や形状(財物の大小など),その財物を持ち運ぶことがどれくらい容易か,場所や時間の状況,その財物がなお他人の支配領域内にあるかどうか,など様々な事情を総合考慮して判断されることとなります。
本件についてみると,テレビをトイレの天井の棚の中に隠すという事は,被害店舗にとってはそのテレビの所在を把握困難にすることといえます。そして,Aは,警備員が怪しまれなければ,その後,店の外にテレビを運び出すことが可能な状況を作っています。
そのため,事実上他人の支配内に存する物体を自己の支配内に移したとき,と評価することが可能です。よって,Aがテレビをトイレの天井の棚の中に隠した時点で既遂に達したといえ,未遂罪による刑の減軽はありえません。
本事例と類似の事案である【東京高判平成21年12月22日】は次のように述べています。
「以上の事実関係によれば,被告人は,本件テレビをトイレの収納棚に隠しいれた時点で,被害者である本件店舗関係者が把握困難な場所に本件テレビを移動させたのであり,しかも上記のように被告人が袋を買う際に不審を抱かなければ,これを店外に運び出すことが十分可能な状態に置いたのであるから,本件テレビを被害者の支配内から自己の支配内に移したということができ,本件窃盗を既遂と認めた原判決は正当~」。
上記判例のように,テレビをトイレの収納棚に入れた場合,警備員などが気づかなければテレビを店の外に運び出すことは十分可能な状態であり,これをもって被害店舗の支配内から自己の支配内に移したと評価できます。
よって,この事案において,窃盗罪は既遂になると考えられます。
Aがスーパーで店備付けの買物客用かごに店の商品を入れた上で,代金を支払わずにこれを持ち帰って窃取しようと考え,店員の隙を見てパン棚の脇からレジを迂回してその外側に出たが,同店に設置されている台の上に買い物かごを置いたところで店員に押さえられた事件では,次のように述べています。
「被告人がレジで代金を支払わずに,その外側に商品を持ち出した時点で,商品の占有は被告人に帰属し,窃盗は既遂に達すと解すべきである。」
この裁判例のポイントとしては,「買物かごに商品を入れた犯人がレジを通過することなくその外側に出たときは,代金を支払ってレジの外側へ出た一般の買い物客と外観上区別がつかなくなり」「最終的にい商品を取得する蓋然性」が「増大」という点です。
その他にも,自動車はエンジンを始動させ発信可能な状態にすれば既遂になるというものもあります(広島高判昭和45.5.28)。
窃盗罪で逮捕されたり,在宅捜査が進んでいる場合でも,,前科がないこと(特に同種前科がないこと)や犯罪の悪質性が低い場合には,被害者(被害店舗)との間で示談をすることで不起訴の可能性を高めることができます。
ここで「示談」とは,被害者との合意のことをいいますが,通常は慰謝料を含めた被害弁償をして被害者から許しを得ることをいいます。なお,店舗によっては一律示談に応じないところもありますが,買取による被害弁償に応じていただけることが多いです。示談の途を開くためにも弁護士に依頼するメリットは大きいと言えます。
特に,同種前科がある場合には,不起訴獲得はハードルが高くなります。このような場合には,不起訴獲得に力を入れつつも,略式裁判により罰金処分を獲得することもポイントとなってきます。
ここで,略式裁判とは,検察官の請求により,簡易裁判所の管轄に属する100万円以下の罰金又は科料に相当する事件(事案が明白で簡易な事件)について,異議のない場合,正式裁判によらないで検察官の提出した書面により審査する裁判手続です。
雑駁にいうと,罰金を支払うことによって手続きから解放される制度です。
窃盗罪では罰金刑が定められており,Aが自白している場合など簡易な事件に該当する場合には,検察官の請求により略式罰金処分により終了する途があります。
なお,本来であれば,正式裁判(通常の裁判)であったとしても,被害店舗に被害弁償したり,被害店舗と示談を成立させることにより略式罰金による事件の終了を目指すことは重要となってきます。
「逮捕」とは,被疑者の身体を強制的に拘束し,指定の場所に引致することをいいます。逮捕には,「令状による逮捕」(「通常逮捕」「緊急逮捕」)と令状にもとづかない「現行犯(準現行犯逮捕)」とがあります。窃盗罪についても,発覚したときの態度・取調対応や同種前科の有無,罪証隠滅などを考慮して逮捕されるケースも少なからずあります。
窃盗罪など被害者がいる犯罪では「被害回復(被害弁償)」や「示談」が最終的な処分に影響を与えます。特に「示談」は,刑事事件において,被疑者・被告人に有利な事情として考慮されることが多々あります。
例えば,検察官の終局処分の前に示談が成立すれば,不起訴処分につながりやすくなります。また,通常であれば正式裁判のルートにのるものも略式処分で終了することも少なからずあります。さらに,起訴後であれば、執行猶予付きの判決など量刑に大きな影響を与えます。
特に高額な窃盗事件においては,実刑を回避するためにも示談は非常に重要になってきます。
窃盗罪の不起訴事例をご紹介します。
ご家族が窃盗罪で逮捕されたため,弁護士接見の要請を受け,弁護士が接見に赴きました。逮捕されたご本人は、身柄拘束期間が伸びることによって退学のおそれがあることを懸念されていました。
逮捕された方は,解雇や退学の不安を抱えられる方が多くおられます。そのため,早急な対策が必要となります。
ご依頼後,弁護士が早急に示談活動に着手するとともに,本人の誓約,ご家族等による再発防止策を立てた結果,早期の釈放及び不起訴につなげることができました。
本件では,早期のご依頼が功を奏したこともあり,早期の身体拘束解放及び不起訴処分獲得が可能となりました。
窃盗罪の略式罰金事例をご紹介します。
同種前科,余罪がある方が窃盗事件で逮捕勾留されました。ご家族の方から接見要請を受けるとともに,ご依頼を受けました。同種前科や被害金額をみると,本件は正式裁判の見通しである事件でした。
逮捕された方やそのご家族は,実刑の心配をされる方が多いです。
ご依頼後,ご家族には再犯防止策を真剣に考えていただき,その経過等を弁護士が書面にまとめ検察官に意見書を提出しました。と同時に,被害回復を真摯に行いました。加えて,少しでも身体拘束期間を短くするために裁判所に対しては,身柄解放のための不服申立ての書面を提出しました。結果として,勾留延長期間が一部短縮され釈放となりました。。また,検察官には上記経緯を理解していただき,最終的には略式罰金処分で終了しました。
本件では,ご本人の真摯な反省とご家族の再犯防止策の真剣な検討,そして被害回復が功を奏しました。また,早期のご依頼が功を奏したこともあり,勾留延長に対する準抗告が認められました。今後もご依頼者様やご家族様にとって有益な結果となるように活動していきたいと思っております。
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